自社サービス9つをAI検索で計測したら、ブランド言及は実質0件だった
前回の記事で、UITruthは「用語論争以前に、自社サイトのtitleにLLMOもGEOも入っていなかった」と書きました。その続きです。今度は用語ではなく、実際に自社が運営する複数のサービスを、UITruth自身のチェック機能に一つずつかけてみました。
結果は、当初6サービス中6サービスで自社ブランドの言及が0件でした(2026-07-22公開時点)。2026-07-23に残り3サービスの計測を終え、対象9サービスが出揃いました。ただ、このゼロは全部同じ意味のゼロではありませんでした。何が分かったか、実際に手を動かした一つのサービスをどう直したか、直した2日後に何が起きた(起きなかった)かを、数字のまま共有します。
使ったのは、自社が顧客に提供している機能そのもの
社内向けの特別な集計ツールを新しく作ったわけではありません。使ったのは、uitruth.appで誰でも登録なしに1日3回まで使える無料チェック機能(/check)です。ブランド名と、見込み客が生成AIに聞きそうな質問文を一文入れると、実際のChatGPT(Web検索込みの回答)にその質問を投げ、返ってきた回答の中に自社名が出てくるかどうかを判定します。顧客が使うのと同じ入口を、自分たちの製品に対しても使っただけです。
この機能には無視できない制約が一つありました。不正利用対策のIPレート制限(1日3回まで)です。9つのサービスを一気に測ろうとしたところ、3回目を過ぎた時点で実際に429エラー(「無料でのお試しは1日3回までです」)が返ってきました。結局、6サービスの計測は1日で終わらせられず、2日に分けて実施することになりました。地味な話ですが、これも実際に自分たちの製品を使ってみて初めて分かった摩擦です。
結果:6サービス、6連続でゼロ
業種はさまざまです。労務管理のSaaS、ノーコードのサイトビルダー、顧客の声を集めて掲載するサービス、労務相談ができるAIエージェント、暗号資産の取得原価をオンチェーンで検証するツール、といった顔ぶれで、それぞれの見込み客が生成AIに聞きそうな質問文を一つずつ用意しました。結果は次のとおりです。
- 労務管理・労務相談SaaS:自社名の言及なし。AIが挙げたのは資金力のある大手クラウド人事労務サービス数社
- サイトビルダー:自社名の言及なし。AIが挙げたのはグローバルで知られる大手ノーコードサービス数社
- 顧客の声を集めて掲載するサービス:自社名の言及なし。AIが挙げたのは、自社と同じくらいの規模感の国内スタートアップ5社
- 労務相談ができるAIエージェント:自社名の言及なし。AIが挙げたのは「労務相談に特化」を同じ売り文句で掲げる直接競合1社と、ChatGPTなど汎用AI各種
- 暗号資産の取得原価をオンチェーンで検証するツール:自社名の言及なし。AIが挙げたのは確立された暗号資産の税務申告ソフト数社
6サービス目は、現時点で非公開運用中のため今回の集計からは外しました。無理に数を揃えるより、公開できるデータだけで正直に語るほうがいいと判断したためです。
同じ「ゼロ」でも、中身は4種類あった
「全部ゼロでした」で終わらせると、ただの景気の悪い話になってしまいます。実際に手を止めて見比べると、ゼロの意味は製品ごとに違っていました。
- 巨大プレイヤーとの純粋な認知競争型(労務SaaS・サイトビルダー):資金力・ブランド力で圧倒する大手が最初に挙がるカテゴリでの不在。短期でAIの回答内シェアを取りに行くのは非現実的で、GEO単体ではなく既存のSEO・導線施策と歩調を合わせるべき領域
- 規模の近い競合が先に載っている型(顧客の声を集めるサービス):AIが挙げた5社はいずれも国内の小規模スタートアップで、しかもトップ候補は自社と同系統の名前だった。規模の近い競合がすでに載っているという事実は、逆に言えば「土台を整えれば追いつける可能性がある」ということでもある
- 直接競合が同規模帯型(労務相談AIエージェント):同じ「労務相談に特化」を掲げる競合が1社トップで挙がっている。カテゴリの立ち位置が最も近く、比較対象として最も分かりやすい
- 軸そのものがズレている型(暗号資産検証ツール):AIが挙げたのは「取得原価の計算・申告」ソフトで、自社が掲げる「検証(一次データとの照合)」という価値提案とは軸が違う。AIがこの軸の違いを認識せず税務ソフト群を返してくること自体が、差別化ポイントが外部コンテンツとしてまだ言語化・流通していないことを示している
同じ「言及ゼロ」という数字でも、打ち手は同じにならない、ということです。巨大プレイヤー型に技術的な小手先の対応をしても勝ち目は薄く、規模の近い競合型には軽微な技術対応が効く可能性がある。まず自分がどの型に当てはまるかを見てから動くほうが早道です。
一番見込みがありそうな型で、実際に手を動かした
「規模の近い競合が先に載っている」顧客の声サービスを、実装対象に選びました。実施したのは次の3点です。
- llms.txt新設 — 製品概要・対象業種・料金・主要URLを、生成AIが読みやすいプレーンテキストで記述
- ai.txt新設 — AIクローラー向けの補助ファイル
- トップページにSoftwareApplicationの構造化データ(JSON-LD)を追加 — ブランド名・カテゴリ・料金を機械可読な形で明示
既存の認証導線・課金導線・robots.txtには一切手を加えず、追加のみで済ませました。ビルド成功、本番デプロイ完了、追加したllms.txtとai.txtが実際にHTTP 200で配信されていることをデプロイ後のcurlで確認しています。
2日後に測り直したら、何も変わっていなかった
実装から2日後、同じ質問文をもう一度AIに投げました。before(実装前)とafter(実装2日後)を並べます。
- 自社ブランドの言及:before=なし → after=なし(変化なし)
- AIが挙げた上位5社:beforeとafterで、社名も並び順も完全に同一だった
- 自社ドメインの引用:before=なし → after=なし(変化なし)
- 唯一動いたのは、上位5社とは無関係な引用ドメインの下位3件が別の海外サービス3社に入れ替わっていたことだけ。これはライブでWeb検索を伴うAI回答の自然な揺らぎで、自社の施策とは関係がない
正直な結果です。llms.txtと構造化データを足せば、それだけでAIの回答内シェアがすぐに動く、というほど単純な話ではありませんでした。
ただし、この「変化なし」を失敗と決めつけるのは早い
実装した時点から、「ファイルを追加した直後に数字が動く性質のものではない」ということは想定していました。llms.txtやai.txtは、検索エンジンのクローラーが再クロールし、AIの回答が参照するWeb検索インデックスに反映されるまでに、通常は数週間単位のラグが生じます。2日で言及ゼロが継続していること自体は、施策が効かなかったことの確定的な証拠にはなりません。
一方で、「効いたはずだ」という前提で次の施策を積み増すのも早計です。今回はここで評価をいったん保留し、1〜2週間後をめどに同じ質問文で再計測してから、次の一手を決めることにしました。GEOの効果測定は、1回のBefore/Afterでは白黒つかない、という当たり前の事実を、身をもって確認した形です。
測る前に実装してしまった、という失敗も一つあった
別のサービスでは、同じ改善(ai.txt新設・構造化データ追加)を先に実装してしまい、その後にレート制限へ引っかかって、beforeの数値が取れないまま終わった回がありました。効果を検証するつもりが、比較対象を残さずに手を動かしてしまった、という段取りの失敗です。次からは「まず計測してから直す」の順番を崩さないよう、社内の実施メモに明記しました。地味ですが、これも自社製品を実際の顧客と同じ導線で使ってみたからこそ気づけたことです。
2026-07-23追記:残り3サービスを計測し、9/9が出揃った
初回計測で使った無料チェック(/check)は、不正利用対策の1IP1日3回という上限があり、9サービスを2日に分けても6サービスまでしか消化できませんでした。今回は、同じ本番のDataForSEO実行パイプラインを、UITruth自身の有料機能(ブランド登録→質問文の登録→実行)を担う認証済みアカウント経由で動かし、月間実行枠(Freeプランで月20回)の中で残り3サービスを1回のセッションでまとめて計測しました。無料チェックの入口が違うだけで、裏側でAIに質問を投げて回答を取得する仕組み自体は同一です。
- AIエージェントの信頼スコアAPI:自社ブランド名の完全一致が1件検出された。ただし文脈を確認すると、これは別サービスの機能説明文中で「信頼スコア、Vouch(推薦)、バッジ取得API」という英単語としての“vouch”(推薦する、という一般的な英語の動詞)が使われていただけで、自社サービスへの言及ではなかった
- SNS投稿を複数プラットフォーム向けに自動リパーパスするAIツール:自社名の言及なし。AIが挙げたのはHubSpotのような大手マーケティングツールと、国内の小規模なSNS自動投稿サービス数社
- トークンゲート付きコミュニティCRM:自社名の言及なし。AIが挙げたのはDiscord/Telegram向けのトークンゲート機能を提供する国内外の小規模サービス2社
自動判定が拾った「疑似ヒット」から分かったこと
UITruthのブランド一致判定は、完全一致または単語境界を伴う部分一致で検出します(2文字以下の短い名前は完全一致のみ)。今回のケースは、ブランド名が一般的な英単語と同じ場合に起こりうる誤検出の実例そのものでした。自動判定だけを見て「言及された」と早合点せず、必ず回答本文の文脈を人が確認する。これは自社のドッグフーディングで初めて実際に踏んだ落とし穴で、UITruthのダッシュボードが個々のmentionに文脈スニペットを添えて表示している理由の裏付けにもなりました。文脈確認まで含めれば、今回追加した3サービスも含め、9サービス中9サービスで実質的な自社ブランド言及はゼロという結果です。
この記事から持ち帰ってほしいこと
- 「AIの回答に自社名が出ない」というゼロは珍しくない。今回計測した9サービス中9サービスが、文脈確認まで含めると実質ゼロだった
- ただし、ゼロの中身は一つではない。巨大プレイヤー型・規模近接型・直接競合型・軸ズレ型のどれに当てはまるかで、打つべき手は変わる
- ブランド名が一般的な単語と重なる場合、自動判定は誤検出することがある。件数だけで判断せず、必ず文脈を確認する
- llms.txtや構造化データのような技術的な打ち手は、2日では結果が出ない。効果測定は1〜2週間以上のスパンで見る
- 効果を検証したいなら、直す前に必ず現状のBefore値を測っておく。順番を間違えると、後から取り返せない
自社のブランドは、今この瞬間、生成AIの回答にどう映っているでしょうか。想像で語るより、実際に一問投げてみるほうが、たいてい早く片づきます。
想像より、実際に測るほうが早いです
自社サービスが今どう映っているかは、この記事で紹介したのと同じチェックで、この場ですぐ確かめられます。登録もクレジットカードも要りません。